2012年5月23日水曜日

さよなら、ファンタジスタ

別ブログで、「明日で5月が終わる。あさってからもう6月か」と書いてアップしてしまった。完全に1週間勘違いしていたことに、後で気づいた。焼きが回った。

ともかく、結論から言うと、高校生の英語教材として、ペーパーバックで教えるには、無理があると思った。

久しぶりに横文字だらけのページをめくりながら、それはそれでおもしろかった。ナルニアにせよ、ロード・オブ・ザ・リングにせよ。だが、高校生が取り組むにはあまりにも難しい。それに長い。

実際に個別指導で、英語の指導にあたっていて、成績上位層の子でも、英語を読むのは、あたえられたテキストで手一杯になっているし、仮にスラスラこなせているとしても、時間が余れば数学の問題のひとつも解かなければならないのが、彼らの日常生活の現実である。

私にしても、初めて一冊のペーパーバックを読みきったのは(カフカだった)、大学生になってからのことである。それはそれで感動的な瞬間だった。

吉田健一(吉田茂の息子。英文科筋ではよく知られている翻訳家、作家、英文学者)が何かの本のどこかのページで言っていたと思うが、「英語ができるようになるためには、ペーパーバックを20冊ほど読めばよい」のは確かなことなのである。私は、それについては確信している。

だが、実際にそういった大胆な取り組みをするには、大学入試制度をはじめ、時代の変革を待たなければならないのではないか。たとえば、その私が尊敬している吉田健一は、日本の大学には行っていないし(ケンブリッジ大学へ行った)。これじゃあ、本当に本物のファンタジスタになってしまうよ。

だとしたら、何のために私はペーパーバックをめくり続けていたのだろう。「おもしろいなあ・・・」とかつぶやきながら。この、1,2ヵ月!とんだファンタジスタは、ほかならぬこの私じゃないか。

じゃあ、まったくの無駄に終わったのか?

いや・・・そんなことはあるまい。どんな失敗も、次へのステップへしていけば、それでいいはずだ。それに、そう思いたい!

とにかく、中高生にはこれまでどおり、個別指導で教えていきたいと思う。疲れたこころを癒してくれるのは、カール・リヒターの平均律




2012年5月16日水曜日

ロード・オブ・ザ・リング

J.R.R.トールキンの「ロード・オブ・ザ・リング」、パート1のBOOKⅠを読み切りました。ややっこしい説明で申し訳ないんですが・・・。訳本では『新版 指輪物語』の1と2にあたります。


J.R.R.Tolkien著 THE LORD OF THE RINGS、 PART ONE The Fellowship of the Ring (BALLANTINE BOOKS)= 画像左とその翻訳『新版 指輪物語1 旅の仲間(上1)』瀬田貞二・田中明子訳(評論社文庫)=右。ジュンク堂松山店にて購入。どちらも700円台だった。

映画も観てないし、よく知らなかったんだけどゲームにもなっているようで・・・。アマゾンの書評なんかを覗いてみるとコアなファンが多いこともわかります。(これは、原作ファンもいれば、翻訳ファンもいるのが素敵ですね)

で、PART ONE を読んでみたのですが、率直に言ってたいへんおもしろく、こりゃファンが多いわけだわ、と思いました。たしかにファンタジーなのだろうけれども、めちゃくちゃ奥が深いですよ!

英語の水準は、フツーに高いな・・・。たとえば私も知らない単語は山ほど出てきます。しかし、そんなことは気にせず読み進める!もちろん落ち着いてから辞書引きますけど、ペーパーバックを読むときに限っていえば、話の流れに身を任せてみるのが、読み切る秘訣になることもあるのです。あと、素晴らしい翻訳があるので、なるほど、ここはこう読むのか、と感心しながら、ともかく前へ読み進めていけばいいんだと、ペーパーバック初心者の方にはお勧めしたいと思うのです。

登場人物のキャラは、ファンタジーだけに、ありえないほど際立っているというか、普段、絶対にお目にかかれないような方ばかりが出てきますが、それでも感情移入してしまうんだから、マスターピースなんだろうよ!かくして、私もすっかりファンのひとりになりました。そして、すでにして、このファンタジーの虜になっているようです。

トールキンの描写から浮かび上がる旧約的な陰影、格調高く謳われる詩の響き、これはいったい、何なのだ・・・。どうしても、これほど危険な旅に出なけりゃならんというのか!?もう10年若ければよ!!

そういったことを考えながら、はたして、これを一緒に読んでくれる仲間はいるのかと・・・、私は頭を抱えてしまいます。『旅の仲間』だけにね。だが、もしいるとするならば、そんなあなたこそ、まさしくファンタジスタなんだよ!!

2012年5月4日金曜日

絵本の世界からガラガラドン

子育てを始めてから気づいたことなんですが、子どもって絵本が大好きなんですよね。保育園の先生たちは、実に絵本を読み聞かせるのが上手く、子どもたちは夢中になって聞き入っている。

あれはすごいな、と思わされるのです。園児なんて、ギャングじゃないですか。言い方悪いけど。でも、先生が絵本を手に取り、読み始めたとたん、さっきまで騒いでいた子たちも静かに座って、「おはなし」の成り行きをじっと見守っている。不思議なものです。

また、何かの本を格別気に入って、何度読んでもらっても飽きることがないのもすごいことだ!むしろ何度も読んでくれとねだってくる。私の娘は『三びきのやぎのがらがらどん』だったけ?あれが大好きで、園の発表会でも演じたし、何ヶ月もたったいまでも、家でときどき演じています。

本の世界が原作となって、演劇になったり、ドラマ化されたり映画化されたり、という原型がそこにあるような気がするのです。まあ、行き過ぎると人生で実演してしまったりということも無きにしも非ず。


ところで、近くに図書館があるのですが、ときどきボランティアの方が「おはなし会」を土曜とか、日曜とかに催してくれるのです。長女が園児だったときには、逃さずいっしょに通っていました。次女もぼちぼち連れていくと喜ぶのかな?

あれは本当に好きでしたね。もちろん、子どものほうが。でも親としても結構楽しかったですよ。土日は保育園も休みで、家で煮詰まることも多いですから、たしかに親が読んでやればいちばんいいこともわかってはいるのですが、そうもいかないときもありますよね。だから、ありがたく頼っていました。

で、小学校にあがると、国語の教科書が配られ、音読することに励み始めるわけなんですが、こういった、本が読み継がれていく教育は、ほんとうに大事だし、素敵なことだと思うんですよ。


ところが、気がついたときには、中学受験の詰め込み教育で塾通い。息抜きか知らないけど、みんなで集ってゲームをやってるようにもみえるんだけど、気のせいでしょうか?各方面からどう言われようが、私はまったく感心しないし、嫌いなんだよ、そういうの。

あの素敵な絵本の世界はどこへいってしまったのだろうか。

これまで中高生を教えてきた私が、いまさら小学生に教えたいことがあるとすれば、そんなガラガラドンなんだよ!!

三びきのやぎのがらがらどん三びきのやぎのがらがらどん
作:(北欧民話) / 絵:マーシャ・ブラウン / 訳:瀬田 貞二出版社:福音館書店絵本ナビ

ちょっと驚いたんだけど、『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)も、瀬田貞二(『ナルニア国ものがたり』と『ロード・オブ・ザ・リング』で知られる翻訳家。東京帝国大学国文科卒)の訳である。いま、この記事書いてて気がついた。すごい人だ・・・